Turning Star
そんな僕の覚悟を汲み取ったのか、ノアールは、意地悪く微笑んだ。
自分が勝つのが分かっているように、その笑みには、自然と嘲笑の色が混じる。










「……良いでしょう。
 言っておきますが、手加減はしませんよ。
 ……遥か彼方の古の時から輝き続けていた、淡く儚く、そして強い、月の光よ、
 彼の者の心を探り、戒めたまえ。
 ……月樹流奥儀、……心操月下。」


ノアールが両手を合わせ組み、そう呟いた瞬間、僕だけが、元あった空間から
引き離された。
確かに、屋敷の中にいたはずなのに、……今見える景色は、黒一色。
ただし、……闇の中に、一筋の光が見える。
僕は、何が何だかよく分からず、無我夢中で、その光の方向へ走っていた。








































しかし、そこにあったのは、希望ではなく、絶望の光だった。
眩いばかりに輝くその光は、僕の心根を容赦なく奪い去ろうとした。




【もう、お前は十分頑張った、……ここでゆっくり休みなさい。】


【大丈夫だ、……あとは、他の者に任せればよいさ。】


【心強き司祭長、しかし、同時に脆くもある君は、……もう、駄目なんだよ。】




頭の中に、無数の声が響く。
僕を労うように、優しくて甘くて、生温くて、聞いているだけで、
心が壊れていってしまいそうな声が、僕を闇へと導こうとしていた。
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