Turning Star
不意に、彼女の身体が崩れ落ちた。
俺は、それに気付き、慌てて抱き止めた。

























「はじめまして。
 私は、風の精霊ティア。
 貴方は、……見事、彼女の能力を開花させてくれました。
 その代償として、彼女は、今、意識を失っています。
 だから、代わりにお礼を言っておきますね。」



そう言って、精霊ティアは、柔和に微笑んだ。
その慈愛に満ちた微笑みに、俺は、言葉を失った。






















「彼女の能力というのは、一体……。」



「あぁ、見た事がないのなら、説明をしなければ、
 理解が追いつかないでしょう。
 彼女の能力は、召喚、です。
 ただし、何らかの触媒を必要とする、特殊召喚。
 触媒が何かは分かりますね?
 そして、彼女の寿命は、召喚をする度に削がれていく。
 彼女の召喚は、彼女の命をも犠牲にしているのです。」



「彼女の、命が…………?」





もはや、声にならない声で呟く俺に、
精霊ティアは、悲しげに微笑み、首を横に振った。
まるで、その皮肉さを嘆くように。
それは、すなわち、その事実を認める事に繋がる。
彼女に出会ったのが初めての俺にも分かるのだから、
召喚されるのを待ち続けていた彼女は、一体どんな気持ちなのだろう。
まだ、こんなにも幼いのに。
彼女のあどけない寝顔を見つめながら、俺はそう思った。
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