Turning Star
【貴方は、一度、私を召喚した。
 ねぇ、思い出して。
 私を呼び出した貴方の言葉は、とても綺麗だったのよ。
 流れるように、透明で、美しかった。
 貴方は、その胸の中に能力を眠らせているの。
 そして、それが目覚める時が来たのよ。】








私が、貴方を呼んだ……?
信じられないけれど、でも、貴方は、……私の言葉が綺麗だって、
そう言ってくれた。
その言葉は嬉しい。
出来る事なら、期待に応えたい。
だけど、私には出来ないのよ。









【いいえ、そんな事はないわ。
 貴方は、自分に自信が持てていないだけ。
 能力は、確かに存在する。
 それを目覚めさせるか否かは、貴方次第。
 そして、これから廻り出す運命の行き先を決めるのも、
 ……貴方次第なのよ。】








私は、そんな大層な人間じゃない。
能力を持たない、ただの落ちこぼれ。
構ってくれるのは嬉しい。
だけど、期待されるのは嫌なのよ。










【そう、それなら、これだけは言っておくわ。
 貴方の能力で、救われる人がいるのよ。
 ……あ、……もう行かなくちゃ…………。
 彼の……妨害に、は敵、……わない、わ……。
 それじゃ、あ、……また会いましょう……。
 私は貴方を、……信じている、から…………。】








ねぇ、待ってよ。
私を置いていかないで。
私を、独りにしないで。
ねぇ、私が貴方を呼んだなら、貴方は来てくれる?
いや、……疑ってばかりじゃ駄目、なのかもね。
信じなきゃ、これからは。

























そして、意識は、久方ぶりに、深い海の底へと沈んでいった。
まるで、安息を求めるかのように。
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