Turning Star
「それって、……この学園の人じゃ、……ないよね?」



「たぶん、……そうだと思う。
 でも、……年は、私達と同じくらいだったと思うわ。」



「この学園の結界を破ってくるような人、……って事か。
 ……それで、その後は?」






続きを促すと、一瞬藍は言葉を詰まらせて俯いたけれど、
再び私に向き直った。



























「いくら何でも、廊下に堂々と侵入者がいたら、皆が動揺すると思ったの。
 だから、……私が解決しなきゃと思って、とりあえず、……部屋に入れたわ。」


「部屋に入れた、って……。」


「まぁ、それは、今は置いておいて。
 それでね、出来れば穏便に解決したかったから、
 【お茶でも煎れてきますね】、って言ったら、
 【お気遣いありがとう。礼儀正しい人だね。でも、僕の事はお構いなく。
  長居しちゃ、君と、……同室の人にも申し訳ないから。】って返してきて、
 あれっ? と思ったわ。」








そりゃ、敵という立場なら、その反応は明らかに不自然だ。
敵対する者同士は、互いに殺気なんかをぶつけ合って、
下手すれば、いつ暴発してもおかしくないような、そんな雰囲気のはず。























「敵にしては、妙な雰囲気を醸し出していた。
 普通なら、もっと敵意を剥き出しにするはずなのに、……と?」


「ええ、そうよ。
 ……でも、それは、彼の‘作った’雰囲気に過ぎなかった。」


そう言って、藍は、苦い表情を見せた。
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