幸せをこの手の中に
傍に居たから

「お前なんか、拾わなければ良かった」

そう言って、彼は死んでいった。

いつもの事。

悲しいのも、辛いのも慣れていた。

住んでいた家に背を向けて、僕は、歩を進めた。
行く当てなんかない。

今日からまた、公園などで野宿をする日々が続くのだ。



人の死を初めて見たのは、6歳の時。

死というのが良く解らなくて、ただ眠っているだけかと思っていた。

その時に死んだのは、僕の母親で、僕は、また母親が目覚めるのを信じてじっと待った。

何日も、何日も……

その内、腐り始めて、小さな虫達が身体を蝕んで……そうして、ようやく母親は戻らない事を知った。



僕をそこから連れ出したのは、母親の弟だった。
葬儀もやってくれて、家に住ませてもらって、何とか心身的にも落ち着いた頃、その人と僕が、2人で留守番をした時があった。

ぎこちない空気が漂う中、その人は重たい口を開けて、教えてくれたのだ。

僕が、拾われた子供だという事を。

死んだ母親の、実の子供ではないという事を。



――そうして、2度目の死を見た。

真実を知ってから、約1年後の事だった。



僕は、死神か何か―…そういう類いのものではないだろうか。

確証は無いが、僕と関わる人達は、皆死んで行くのだから、そう思ってしまう。

僕は、人気の無い公園のブランコに腰掛けて俯いた。

夕飯は、どうしよう。

明日の朝食は――

考えても、食べられるものではない。

所持金も無いし、食欲も、あまり無い。

軽く溜め息をついて、ベンチへと移動。

少し、寝る事にした。


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