幸せをこの手の中に
傍に居たから
1
「お前なんか、拾わなければ良かった」
そう言って、彼は死んでいった。
いつもの事。
悲しいのも、辛いのも慣れていた。
住んでいた家に背を向けて、僕は、歩を進めた。
行く当てなんかない。
今日からまた、公園などで野宿をする日々が続くのだ。
人の死を初めて見たのは、6歳の時。
死というのが良く解らなくて、ただ眠っているだけかと思っていた。
その時に死んだのは、僕の母親で、僕は、また母親が目覚めるのを信じてじっと待った。
何日も、何日も……
その内、腐り始めて、小さな虫達が身体を蝕んで……そうして、ようやく母親は戻らない事を知った。
僕をそこから連れ出したのは、母親の弟だった。
葬儀もやってくれて、家に住ませてもらって、何とか心身的にも落ち着いた頃、その人と僕が、2人で留守番をした時があった。
ぎこちない空気が漂う中、その人は重たい口を開けて、教えてくれたのだ。
僕が、拾われた子供だという事を。
死んだ母親の、実の子供ではないという事を。
――そうして、2度目の死を見た。
真実を知ってから、約1年後の事だった。
僕は、死神か何か―…そういう類いのものではないだろうか。
確証は無いが、僕と関わる人達は、皆死んで行くのだから、そう思ってしまう。
僕は、人気の無い公園のブランコに腰掛けて俯いた。
夕飯は、どうしよう。
明日の朝食は――
考えても、食べられるものではない。
所持金も無いし、食欲も、あまり無い。
軽く溜め息をついて、ベンチへと移動。
少し、寝る事にした。
そう言って、彼は死んでいった。
いつもの事。
悲しいのも、辛いのも慣れていた。
住んでいた家に背を向けて、僕は、歩を進めた。
行く当てなんかない。
今日からまた、公園などで野宿をする日々が続くのだ。
人の死を初めて見たのは、6歳の時。
死というのが良く解らなくて、ただ眠っているだけかと思っていた。
その時に死んだのは、僕の母親で、僕は、また母親が目覚めるのを信じてじっと待った。
何日も、何日も……
その内、腐り始めて、小さな虫達が身体を蝕んで……そうして、ようやく母親は戻らない事を知った。
僕をそこから連れ出したのは、母親の弟だった。
葬儀もやってくれて、家に住ませてもらって、何とか心身的にも落ち着いた頃、その人と僕が、2人で留守番をした時があった。
ぎこちない空気が漂う中、その人は重たい口を開けて、教えてくれたのだ。
僕が、拾われた子供だという事を。
死んだ母親の、実の子供ではないという事を。
――そうして、2度目の死を見た。
真実を知ってから、約1年後の事だった。
僕は、死神か何か―…そういう類いのものではないだろうか。
確証は無いが、僕と関わる人達は、皆死んで行くのだから、そう思ってしまう。
僕は、人気の無い公園のブランコに腰掛けて俯いた。
夕飯は、どうしよう。
明日の朝食は――
考えても、食べられるものではない。
所持金も無いし、食欲も、あまり無い。
軽く溜め息をついて、ベンチへと移動。
少し、寝る事にした。