年上カノジョに蜜な罠



「うわぁぁぁ…っ」


思い切り、泣いた。

道の真ん中で泣いた。




そこで立ち止まったまま、くるりと後ろを振り返る。




「追いかけて来てもくれないんだね――…」


再び涙で歪み始める世界。


青く澄んだ空さえも、今の私には灰色にしか見えない。



白とグレーに統一された"色"を失った世界をただ、涙で視界を歪ませながらぼんやりと見ていた。





「…ふっ、――ぐすっ」


零れる涙はそのままに、私はハニーハウスのドアを開けた。




あらあらっ、どうしたのっ?


何があったんだ!?



驚いた様子で慌てて私に駆寄って来るおじさんとおばさん。





「…――うわぁぁっ」



おばさんの胸に顔を埋め、また思い切り泣いてしまう。



泣くことしか、出来なかった。




もう頭の中がぐちゃぐちゃになって、何も考えられなくなってしまった。




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