季刊『お屋敷ハンター』
4.ラヴィンスキー・ハウスという悲劇
深い緑を分け入った。
ミヨちゃんの全身からワクワク感があふれ出ている。一歩を踏み出し、わぁおと頓狂な声を上げるので、かがんで目線を合わせてみれば、木々の隙間から屋敷が見えた。
細かなタイル? に覆われた壁は、そんじょそこらでは見かけないものだ、と思われる。
手はかかっている。壁画なのだ。タイルで造られたグラスゴーの、いやアヴィニョン? いや、――やめておけ、どうせわからんカタカナだ。
とにかく確か、最古の壁画の模りになっていた。近づいて見れば、素人とは思えない仕事技術だとわかる。
もしオレがその手の力を持つモノならば、残留執念と散った汗を感じ取っているとこだろう。