季刊『お屋敷ハンター』
 ぱきっと足の下で乾燥しきった枝が折れる。ミヨちゃんとオレとの間で、アリが行列を作っていた。

影は小さくって丸くって漆黒。がさがさと草を除けるたびに、謎の虫が飛び交っている。

すでに人外魔境と化しているじゃないか、この場所は。


 それでもかつては金持ちの別荘として、華やかに機能していた時代があったんだろうか。

こんな草などではなく目にも美しい花木が植えられて、歩きやすく整えられた小道などを、それとなく着飾った本物のセレブが傷んじゃいない靴を運ぶ。

もちろん壁画はもっと磨かれていたのだろうし、あの片側が朽ちて落ちている、きっと花壇への入り口の柵も、真っ白に輝いていたのだろう。
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