季刊『お屋敷ハンター』
狭いわけではないつーのに、ミヨさんはオレを押しのけた。

この屋敷について、何事であれ教えてもらうことはおもしろくなかったらしい。
教えて欲しくて連れてきたくせになんでしょうね、とオレはヒールな足跡の後につく。


もともとが土足の設定なのか、上がりぶちが低い。

外の壁画といい、この屋敷は近代風の造りなのかもしれない。欧風古典な建物ではなく、アメリカ風前衛かな。言い方てきとーですが。


「これが個人の持ち物かよ。日本も貧富の差って激しかったんだな……」


 次の間の天井、取り外せなかったのか下がったままのシャンデリアを見て、侘しい気持ちになって言った。

別荘だけがゴージャスであるわけはないのだから、本宅もこんなでさらにこれということ。

そして豪勢なものをこんなして放っておけるという二点において、重ねて侘しい。

計り知れない世界よのう、底辺に住む人間にはのう。
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