lifetime
AM12:30 自分の台がまとまったコインを吐き出し、一度目の食事休憩をとる。同業の連中には「そんな暇があるなら回すわ」という奴が多いが自分は違う。どうせ一生付き合う博打だ、焦ってなんになるってんだ? 近所の定食屋でやや遅い昼食をとりホールに戻る。「・・・粘ってやがるな」朝の女だ。実の所をいえばいい女だから見てた、だけではない。彼女が打ってる台は俺の第二候補でもあった。当然というか気にはなる。軽く見積もっても二、三万は入ってるにも関わらず止めない、と、いうことはだ、あの女が確信を持って打ってる証だろう。パチンコパチスロというギャンブルはある程度の努力で勝率を上げることはできても勝ち続けることは非常に難しい。なぜならどんな打ち手でも「この台はちゃんと粘れば出る」と解ってても、二万、三万と金が入るうちに確信が疑惑に変わりだす。「読み違えたか?」と。誰にでも(どんな凄腕でも)ある「揺らぎ」だ。あの女の打ち方には「揺らぎ」がない、少なくとも感じさせない。これは凄い事なのだ。 ふと女と目線が合う。 思わず逸らしてしまう。正面から見るとこちらが「ドキリ」とする位、美人だ。 いかん、自分の台にかからねば。日当確保に専念しよう。・・・背中に突き刺すような視線、今度はこちらが見られてるようだ。一般客の嫉妬、羨望の混じった絡む様な視線ではなく、冷静な観察の視線。 「同業、か。」 呟き、台に向かう。この店も潮時かもしれない