17才
カオルの足が止まる。
それでもなかなか、こっちを向いてはくれなかった。
「あ、あの…ね。あの…」
上手く、言葉が出てこない。
これじゃあ、別れの時間を延ばしているだけみたいじゃない。
まぁ実際、そうでしかないのだけれど。
今の自分は、全然自分らしくない。
“チヒロはチヒロらしく、自分の気持ちに正直になったらいいのっ。”
不意に、ミチが言ってくれた言葉が頭をよぎる。
あたしはあたしらしく、気持ちに正直になる……
「あ、あの…」
「ありがとな」
小さく響いたあたしの声は、カオルの声によって消された。
背を向けていたカオルがやっとこっちを向いてくれた。