17才
『コウタ君は今、プロ野球界から声がかけられているくらい、すごい人なん――』
「……あっ」
あまり野球のことを知らないだろうアナウンサーの声を聞いていると、後ろから微かに声が聞こえた気がした。
ふと、振り向いてみると
ネクタイを緩め、走ったのか髪がボサボサで汗だくのアイツがそこにいた。
「…っ悪い、チヒロ!」
「遅いっ。カオル、あんたねぇ…」
顔の前に手を合わせて謝るカオル。
額から流れる汗を見て、ハンカチを渡しながら言った。
「だからいつも言ってんのに…」
「ゴメンナサイ…」
結婚式場で説教されるのなんて、きっとカオルくらい。
そして、結婚式場で説教するのなんて、きっとあたしくらいだろう。
リュウヤが言ってた“アイツ”はもちろんカオルで
あたしはカオルをずっと待っていたのだ。