【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙③〜
表通りから少しはずれたこの小路には、手入れの行き届かない小さな屋敷も多く並んでおります。

その中の一軒に、垣もやぶれ、打ち捨てられたかのような屋敷をご覧になって、あまりのありさまに、一の君がしばし足をお止めになっておりますと、この、人の住むかと思われるような屋敷の奥から、少女がただひとり供を連れて、庭に出て参りましたので、一の君は、たいそう驚かれて、

「さても」

とて、垣の破れからこれをじっとご覧になるのでございました。
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