【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙③〜
そのように思案しておられましたので、

「ねぇ、桔梗。あちらに……」

と、少女がこちらに近づいてくるのを、一の君は、少しの間、気がつかずにいらっしゃったのでした。

「……あら……」

少女がこちらに気づいて、そのように小さな声をあげたので、ようやく、一の君も、少女が触れられそうなほど近くにいるのがおわかりになって、

「……このように荒れた屋敷に、あなたのように幼い方がいらっしゃるので、つい……」

と、このように、恥じらわれます。
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