【連作】そらにかなでし〜平安朝禁断恋草紙③〜
ところが、少女が答えようとその唇をそっと開くまもなく、先ほどの女房が、

「姫様、どなたかいらっしゃるのですか」

と声をあげるので、それ以上の言葉も交わせぬままに、

「いいえ、なんでもないわ」

少女がこのように答えて、屋敷の中に戻ろうとするのを、一の君は、袖を引いてお止めになります。
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