奇跡をあなたに
修学旅行の当日。


その日も望は朝迎えに来てくれた。


普通、親が車で学校まで送っていってくれるんだろうけど、私にはいないから...歩いて行くしかなかった。

荷物が重くてタクシーを使おうとも思ったけど、少しでも母のお金を大切に使いたかった。


だから私は歩いて行くことにした。


「幸...大丈夫か?」


そんな心配してくれる望の優しさが本当は嬉しかった。


でも、それを素直には言えなかった。


言ったらきっと、望を好きだと実感してしまいそうで...


私と望はなんとか学校につき、バスに乗り込んだ。


「望、一緒に座らない?」


香苗だ。


「俺、幸と座るから。」


「.....ッ」

香苗はとても悔しそうに私を見てきた。


「幸、ここに座り?」

望がそう言ってくれたけど、私はあえて座らなかった。


あとで、香苗に何されるか分からなくて怖かったから。



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