奇跡をあなたに
泣きそうな目をこらえ、私は望のお母さんの所へ行った。
「本当にすみませんでした。」
「いいのよ。幸ちゃんの気持ちは、望に伝わってると思うわよ。」
「...ずっと、一緒にいられると思ってたんです。今まで生きてきて、友達なんていなくて...でも、望が初めて私の友達になってくれた、たった1人の人だったんです。」
「ありがとう。望も幸ちゃんと友達になれて、出逢えて本当に嬉しいと思うわ。あの子は本当に強がりで、弱音なんか言わない子だから...エイズに感染した時も、わざと明るく振る舞ってたわ。そんなあの子を見るのが辛かった。」
「....一番辛かったのは望なんですよね...私は自分だけが辛いって思ってたんです。いつも望に支えてもらって、助けてもらって...でも、そんな時も望はきっと苦しくて、怖くて、辛かったんだなって...なんもしてあげられなかった自分が本当に情けなくて....。」
「そう思ってくれるだけで、望は満足だと思うわ。私が望の変わりに言える事は、“望と友達になってくれてありがとう”って言いたいわ。あなたがあの子の一番の支えになったと思うから...」
「本当に...ありがとうございます。」
私は望のお母さんに深く頭を下げた。