奇跡をあなたに
私は、母の何を見てきたんだろう。


母の気持ちを気付かなかったんじゃなく、気付かないふりをしてたのかもしれない。


よく考えてみると、私が1人暮らしするときも母が部屋を探してくれた。


それに、家賃も学費も全部母が出してくれていた。


それが当たり前だと思ってた。

後から聞いた話だったけど、母には男なんていなかった。


母と住んでいた時も家に男なんて来たことがなかった。


母は言ってたらしい。

「男なんて作る時間があったら働く」って...


それがなんでなのかその時は気付けなかった。


母がなぜそんなに働いていたのか...


母の火葬もすべて終わった頃には、新しい年になっていた。

家に持ち帰る母の骨はとても軽かった。

もう戻ることのない母の姿を見て、泣くよりも悔しさがわいてきた。


本当に1人になって気付いた事は、“寂しい”という気持ちだった。

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