晴れのち雨ときどき曇り
一日を苦手な奴と過ごす羽目になったことを気にしていない星野に、俺はすっかり懐柔されていたようだった。
「行こ」
俺は、案内プレートを見ながらそう言った。
(水族館の売店は、何でこうファンシーなんだろう。)
俺には全く似合わない。
「日向君、どっちがいいかな?」
敬語まじりの言葉であったり、丁寧なタメ口は彼女らしかった。
緊張が、少しずつ解けていってるのだろうか。
そうだとしたら、嬉しいけれど。
「…右」
何も考えずに彼女に合う方を答えた。
それは、貝殻をモチーフにしたストラップだった。
「じゃあ、これとなら、どっちでしょう…」
俺は、その二つの何が違うのか分からなかった。
「…星野は?」
俺は、不意に彼女の好みが知りたくなった。
「…決められないから聞いてるんです…。目移りしちゃって」
「目移りって言うか、ゴメン。違いが分かんない」
俺が正直に言うと、彼女はきょとん、としてから、細かく貝殻の違いについて教えてくれた。
水族館を出ると、もう陽が傾き始めていた。