晴れのち雨ときどき曇り

「よっ。色男」

 上から、脳天気な声が聞こえて俺は頭を上げた。

「…助けろ、出歯亀」

「俺は覗きじゃないもーん。盗み聞きだもーん」

 垣本は、おどけて言った。

「…疲れる、マジで」

 俺は、ふぅ…、と長い長い溜め息を吐いた。

「ん?アレ、星野じゃねぇ?」

 その名前を聞いて、俺は、がばっと半身を起こした。

「日向クン、可愛い〜」

 今直ぐに、目の前の人物を一発殴りたかった。

 勿論、彼女の姿はない。

「…ーッ」

 立ち上がって、垣本を見る。

「おー、コワ」

 俺は、血管中の血に鉛が入ったように動けない。

「日向君…!」

< 109 / 121 >

この作品をシェア

pagetop