晴れのち雨ときどき曇り

 私は、とりあえず日向君を涼しい方に移動させた。

 日向君の顔を見ると、苦しそうに眉間が歪んでいる。

 私は彼の顔に浮きあがる汗を軽くハンカチで拭いた。

 髪の束がサラリと手に落ちて、擽ったい。

 怖い顔付きな筈なのに、目を閉じている日向君は何故か綺麗に見えた。

 長い睫と、整った凛々しい目鼻立ち。

 彼の顔をこんなに近くで見たのは初めてだった。

 私は、はっと我にかえって鞄から顔を冷やせるものを探す。

 そして、半分凍ったスポーツドリンクを入れたペットボトルを見付けたので、それをそのまま日向君の額に当てた。


 それから大分経ってから、彼はうっすらと目を開けた。

「…悪い。夏バテ気味で」

 そう言いながら彼は身を起こした。

 私は、額に当てていたペットボトルをそのまま渡す。


(まだ栓を開けていないから大丈夫だよね……。)

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