晴れのち雨ときどき曇り

「……星野みたいなのがいる」

 とても長い沈黙を静かに破ったのは,日向君のほうだった。

「え?」

 私は日向君の方を見た。

 彼は「しまった」とでも言いたげに,目を反らす。

 でも,また直ぐに此方を窺った。

 私は日向君の次の言葉を待っていた。

「……あの、上の黄色い魚が、星野に似てると思って」

 躊躇いがちに日向君は言った。

 顎で軽く魚を示す。


 けれど,私にはどれがそうなのか分からなかった。

(あの,目付きがデロンとしてるのかな……それとも,岩の近くの小さい子かな……)

 そこに目に付いた,小さくて黄色い魚。

 元気なのに,オドオドしているみたいな魚。

「黄色いのって、あれ?」

 その魚を指差すと「……そう、それ」と,日向君は言った。

 彼は,何と無く私に似ていると言って,その魚の方を見た。

 私はそれ以上何も聞かないで,彼と一緒の方向を見る。

 コポコポ……。

 水槽の空気が上の方に昇っていく音が聞こえている。

 黄色い魚は,岩場に隠れてしまった。

(あの魚のどんなところが似てたんだろう……)

 私はいつまでも,その黄色い魚を目で追っていた。
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