晴れのち雨ときどき曇り
「降りそうもない日に降ると早い者勝ちだからね」

「……そう」

だから、傘を貸してくれようとしたんだろうか。

「……困ったな」

雨谷君は考え込むようにして腕を組む。

「何が?」

「俺もさ、もう傘ないんだよねー」

あまり危機感もなく言うので、私は拍子抜けしてしまった。

「……先刻、品川さんと帰るって……」

「うぅん。傘だけ渡した」

「な、何で……」

私は急激な脱力感を感じた。

「何でって……何でかな。俺にもよく分かんないや」

「……あぁ、そう。じゃあ、私……帰るね」

これ以上喋っていると疲れそうなので、私は外靴の踵を踏み直して玄関の方に向かう。

「えぇ?晴子ちゃん、待っ……」

「天川〜!」

私が玄関の戸に手をかけたと同時に担任の先生が此方に走ってきた。
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