晴れのち雨ときどき曇り
1.雨ときどき雨男
「晴子ちゃん」
だから、その名前をあまり呼ばないで欲しい。
私の夢では雨ばかり降っているのに、名前が天川晴子(あまがわはるこ)なんて嫌味としか思えない。
切らずに伸びたままの髪は黒くて女の幽霊みたいだ。
暗いイメージを際立たせてるのに名前だけは爽やかで完全に名前負けしてる。
そんな私が放課後、図書室に入ろうとした時に悩みの種は悪びれなく私を呼びとめた。
「雨谷君が図書室に用なんてあるの?」
(また、だ……。)
私は人付き合いが苦手で、ついこういう言い方をしてしまう事が多い。
でも、雨谷空と言うのは、そんな私の物言いを気にする様子も無い。
そんなところも私は彼が苦手な理由の1つだった。
「あぁ、うん……晴子ちゃ……天川さんって本とか詳しそうだから」
「……詳しいかどうかは分からないけど」