晴れのち雨ときどき曇り

 「晴子」と言う名前を、俺は気に入っていた。

 雨男に、雨谷。

 雨につきまとわれている俺に、晴れなんて縁起がいい。

 彼女は、傘を持っているのに差していなかった。

 理由を聞くと、面倒だからだと言った。

 それが、何だか彼女らしいと思う。

 だだ、濡れないからと言う回答には疑問を感じた。



 彼女の黒くて長い髪は、たっぷりと水を吸っていた。

 そのことに、彼女は気付いていないようだった。

 俺の髪も同じく濡れている。

(そうだ。)

 俺は、思い出した。

(雨宿りをしよう。)


(彼女なら、分かる筈だ。)


 雨宿りの夢が何を示すか。


< 34 / 121 >

この作品をシェア

pagetop