晴れのち雨ときどき曇り

 彼女は、困ったように、そんな場所はないと言ったけれど、直ぐ先にはお誂え向きに屋根がある。

 驚いた顔と、迷惑そうな顔。

 それが、今の俺が知り得る彼女の表情のバリエーションだった。

(もっと。)


(出来れば、ずっと。)


 俺は、彼女の表情の変化を見ていたいと思った。

 彼女は、俺の呟きに丁寧に応えてくれる。

(無視したっていいのに。)

 彼女と話していて、分かった事がある。

 これは俺が見ている夢ではないということ。

 この夢は彼女のものらしい。

 雨が降っていたから、てっきり俺の夢だと思っていた。

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