晴れのち雨ときどき曇り

 それが趣味だとしたら、結構面白い。

 彼女はキョロキョロと辺りを見回している。

 その動作は、動物が周りの危険を察知する為の所作のようだった。


「…職員室に、もう傘がなくて…これを借りたの」

 彼女はカッパのフードをぎゅっと強く掴み、顔を隠しながら言う。

 ここで笑ってしまったら、彼女は怒って走り去ってしまうだろう。


「…困ったな」

 俺は、考え込むようにして大袈裟に腕を組む。

「何が?」

「俺もさ、もう傘ないんだよねー」

「…先刻、品川さんと帰るって…」

「うぅん。傘だけ渡した」

「な、何で…」

「何でって…何でかな。俺にもよく分かんないや」

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