晴れのち雨ときどき曇り

 本当に、俺にもよくわからない。

 もしかしたら、期待していたのかもしれない。

 傘を持った彼女が偶然に玄関に来て、一緒に傘を差して帰ることだとか。

 そんな確率の低いことを、俺は期待していたのかもしれない。

 彼女は、疲れた顔をしていた。

 いや、脱力していると言っていい。

 彼女が俺に背を向けて、帰ろうと玄関の戸に手をかけたと時、担任の先生が此方に走ってきた。


 担任の先生は、俺を気にしつつも彼女に傘を手渡す。

 職員ロッカーにあった傘を貸してくれるらしい。

 透明なビニール傘は、ビニール部分がくすんでいた。

 彼女は、傘をじっと見ながら何かを考えているようだった。

 あの、カッパで。

「…これ、使って」

 彼女は意を決したように傘を俺の前に差し出す。

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