晴れのち雨ときどき曇り

 夢の中では、図書室の受付カウンターが俺と彼女の間にある訳でもなく、下校時間もない。

 夢の中では、形に残らないものばかりがある。

 時間だとか、一緒に居る空間、雰囲気。

 それはとても価値のあるものなのだろう。

 しかし、どれとして現実には残らない。

 日に日に埋まる貸し出しカードの記入欄は、唯一目に見える印だった。

 図書室に行って、受付カウンターに座っている彼女に本を渡す。

 彼女は、慣れた手付きでカードに日付のゴム印を押す。

 そんな日常の積み重ねがあるという事実だけはある。

 でも、肝心な何かがない。

 目に見えない、何か。

 それが、凄く大切なのは分かっているのに、俺は足踏みしているようだった。

 もう少しで届きそうなそれは、彼女の夢で見る空の、遥か遠くにあるようにも思えた。
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