晴れのち雨ときどき曇り

 “お願い”

 その言葉は俺の耳から脳に向かって甘く溶けた。

「夢って分かってるけど、一応言っとく…」と言う前置きに俺はドキドキしてまう。

「…あの本、返却期限過ぎてるよ?」

 次の瞬間、俺は急に恥ずかしくなってしまった。

 何処か行きたいと言ってくれるかもしれないと淡い期待を持つのが間違いなのだ。

(相手は晴子ちゃんだし。)

 俺は、頭を掻いて照れ隠しをした。

 そして、彼女は、怒るでもなく理由を聞いてきた。

 前ならば、速攻で担任に伝えそうなものだけど。

 俺が渋っていると、「じゃあ、別にいいよ。担任の先生に伝えるから」と涼しげに言った処を見ると、どうやら俺の予想は正しかったらしい。

 俺は、自分でもよく分からない胸の内を素直に打ち明けることにした。

「…口実、探してて」

 結論を言うとすれば、それしかなかった。

 説明を続けると、彼女は「どうして?」と不思議そうに聞く。

「晴子ちゃんと居ると楽しいし、図書室にも行きたいんだけど」

 俺は、ひとつひとつ丁寧に話していく。

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