晴れのち雨ときどき曇り
 その夜も私は、いつもの様に雨の降る夢を見た。

雨の降る夢。

一般的には悪くない意味を持つらしい。

雨の降り方によって、違うけれど。

私は傘も差していない。

いつも、そうだ。

雨が降っているのに、私は濡れることもなく独りで立っている。

まるで、白い箱の中の実験体みたいに。

薄曇りの空の色とグレーの地面とが交わる地平線。

それが、夢の中の世界だった。

色もない世界。

しとしとと降る雨。

ただ、今日は色のついた傘を手にしている。

私は、傘を持っていた。

折り畳み式の薄いブルーの普通の傘。

私は、その傘に見覚えがあった。

そう。

この傘は、雨谷君が押し付けていったものだ。


「晴子ちゃーん!」


(あぁ、まただ。)


何で、望んでもないのに現れるんだろう。
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