晴れのち雨ときどき曇り
「てるてる坊主なら、晴子ちゃんが作った方が効きそうだけど…」
あの個性的なてるてる坊主を思い出すと、雨谷は今でも笑ってしまいそうになる。
揶揄するような気持ちではない。
まるで、小さな幸福感が波打ちながら波紋を広げていくような気持ち。
「要らないの…?」
晴子は雨谷が口元に溢れる笑みを浮かべているのが少し気に入らなくて、アクセサリを持っていた方の手を上げて見せる。
「要る!」
雨谷は勢いよく答えて手を出し、晴子の手先に視線を集中させた。
晴子は先刻までのもやもやした気持ちがぱっと晴れた気がする。
雨谷という人間は、晴子の遠回しな言葉選びや、無器用で屈折した優しさのようなものを素直に受け取ってくれる。
晴子は、それがとても心地良かった。
晴子は、アクセサリを差し出された雨谷の手に乗せた。
「…此なら、効くかな」
雨谷は、早速、晴子に貰ったてるてる坊主のアクセサリを鞄につけた。