晴れのち雨ときどき曇り

「…大丈夫じゃない」

 俯き加減で雨谷が言うと、晴子は顔色を変えた。

「保健室行った方がいいよ」

 声音が、心配そうで、優しくて柔らかい。

 雨谷は何も言わずに晴子の声を聞いていた。

「…保健室行くよ」

 いよいよ晴子は雨谷の様子が変であることに確信を持って、雨谷の手を引いた。

 抵抗もせずに素直に着いていく雨谷と晴子の様子は、クラスを好奇に色に染めた。

 しかし、二人ともそんなことは気にならなかった。

 長い廊下を歩く。

 雨谷は、一歩前を歩く晴子の背中を見ていた。

 繋いだ手が、熱い。

 指先の血管からトクトクと流れる音が聞こえる気がした。

 心臓の音が、耳の奥で聞こえる。

 このまま、この幸せで痒い様な気持ちが、繋いだ手から彼女に届けばいいのにとも思うし、知られたくないとも思う。

「ほら、ちゃんと診てもらいなよ」

 晴子は、保健室の前で引いていた手を離す。

「うん…」

 雨谷が保健室に入ったのを確認して、晴子は教室に戻った。


 一方、雨谷は、保健の先生に何処が悪いかと聞かれて左胸だと訴え、保健室を追い出されかけた。
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