晴れのち雨ときどき曇り

 正門はガタガタと小さく動くだけで開かない。

 晴子は内心、かなり激しく苛立っていた。

「晴子ちゃん!」

 目の前から走ってくるのは怒りの主たる諸悪の根源、雨谷空、その人であった。

「何してるの!馬鹿じゃない!?」

 雨谷はとっさに晴子に向かって叫んだ。

 来なくていいとは告げられたが晴子は彼に「馬鹿」とは言われたくなかった。

 二人の間には大きな門がある。

 晴子は頭の中で何かが弾けたような気がした。

「どっちが馬鹿なの?…あんな約束、どうでもいいでしょう…!」

 少なくとも、激しい雷雨と突風の中で、休校して誰も居ない学校に来る程の大層な約束ではない筈だ。

「晴子ちゃんは、どうでもいいと思ってるの?」

 雨谷は晴子にだけ聞こえるような弱い声で言った。

 晴子は、一度だけ言葉に詰まってから、ゆっくり息を吐き雨谷をきつく睨んだ。

「馬鹿は雨谷君だよ。もう、分かったから、一緒に水族館行こう…!?」

 晴子はこんなに大声を出すのが初めてだったし、こんなに突飛な行動をするのも初めてだった。


(全ては、目の前に居る雨男の所為だ。)

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