晴れのち雨ときどき曇り
晴子は、心の中で八つ当たりと分かりつつも、言葉尻が激しくなるのを止められなかった。
雨谷は複雑そうにしている。
普段の晴子ならば、屋内に入ることを提案しただろうが今の晴子はその冷静さを欠いていた。
「でも、雨が!」
雨谷は悲痛そうに言う。
門の格子に手を掛けて、晴子は意を決したように下唇をきゅ、とだけ噛んだ。
「関係ない!私が行きたいから行くの!雨谷君は!?」
言ってしまってから、晴子はスッと胸の重りが落ちた気がした。
途中で傘が飛ばされた。
「うわっ…、晴子ちゃん!大丈夫…!?」
雨谷は、門に張り付いた。
「あぁ、もう!何で開かないの!?」
晴子はガチャガチャと格子に揺らす。
雨谷は、急に落ち着いた気持ちになった。
忍び込む時にも、真っ直ぐに正門から入ろうとする晴子が、晴子らしくて微笑ましかった。
懸命に、開かない門を黄色いカッパのままで開けようとする姿が、とても可愛く思えてしまう。
雨谷は、晴子に気付かれないように少しだけ笑って、裏門の方を促した。