晴れのち雨ときどき曇り
晴れた日の憂鬱
プロローグ
今日は一段と照り返しが強い。
気持ちいいくらいの快晴だった。
俺は、帽子を目深に被っている。
逸る気持ちを抑えながらも、駅前にある噴水の前に目をやった。
時計を見ると、待ち合わせの時間の五分前だった。
俺は、帽子の鍔を指先で上げて待ち人を探す。
彼女は、まだ居ない。
噴水から涼しい風を頬に感じた時、向こうから空色のワンピースを来た女の子が此方に歩いてくる。
日に透ける栗色の髪がふわふわと風に揺れていた。
星野明(ほしのあかり)だった。
星野は小柄だ。
形容するとすれば小動物みたいな感じだった。
彼女は、きょろきょろと噴水の周りを見回した。
そして、俺を見付ける。
俺は、彼女に声をかけようと片手を上げた。
その瞬間。
「ひ、日向(ひなた)君…っ」
星野はビクっと萎縮して後退る。
星野はいつもそうだ。
他の奴には笑いかけるくせに俺の前だとビクビクして、緊張した顔になる。
俺は、行き場のない苛立ちを覚えて、開いた筈の手をそのままグッと拳にして握った。