晴れのち雨ときどき曇り
晴れた日の憂鬱

プロローグ



今日は一段と照り返しが強い。

気持ちいいくらいの快晴だった。

俺は、帽子を目深に被っている。

逸る気持ちを抑えながらも、駅前にある噴水の前に目をやった。

時計を見ると、待ち合わせの時間の五分前だった。

俺は、帽子の鍔を指先で上げて待ち人を探す。

彼女は、まだ居ない。

噴水から涼しい風を頬に感じた時、向こうから空色のワンピースを来た女の子が此方に歩いてくる。

日に透ける栗色の髪がふわふわと風に揺れていた。

星野明(ほしのあかり)だった。

星野は小柄だ。
形容するとすれば小動物みたいな感じだった。

彼女は、きょろきょろと噴水の周りを見回した。

そして、俺を見付ける。

俺は、彼女に声をかけようと片手を上げた。

その瞬間。

「ひ、日向(ひなた)君…っ」

星野はビクっと萎縮して後退る。

星野はいつもそうだ。

他の奴には笑いかけるくせに俺の前だとビクビクして、緊張した顔になる。

俺は、行き場のない苛立ちを覚えて、開いた筈の手をそのままグッと拳にして握った。

< 88 / 121 >

この作品をシェア

pagetop