晴れのち雨ときどき曇り
1.五月晴れと休日
俺と星野は噴水の縁に座って居た。
その距離は人一人分空いている。
(これが今の心の距離……だよな、多分……)
日向陽平(ひなたようへい)、それが俺の名前だ。
俺は、この名前をつけた親を少し恨んでいる。
爽やかな名前とは裏腹な、高い背と、この顔。
色素の薄い天然の茶髪は、俺の無愛想な冷たい顔付きに拍車をかけていた。
「…藍田さんも佐月さんも、どうしたんでしょう」
彼女は不安そうに言う。
同年代に敬語を使われるのは慣れていた。
しかし、彼女のそれは、どう考えても脅えているとしか思えない敬語の使い方だった。
俺は、先刻から返事の来ない携帯電話を睨む。
彼女は、携帯電話を持っていない様だった。
今時、小学生から携帯電話を持つ世の中で、だ。
中学生とは言え、俺たちは来年にも高校に上がる歳だった。