晴れのち雨ときどき曇り

「海亀の裏側とか…見たくなりません?」

(よく分からない…。)

(海亀の裏側…?)

(そんなの見たことがない。)

(あぁ、見たことがないから見たいのだろうか。)


「…見たい、かも」


俺は素直に頷く。


「泳ぎませんね…」

彼女はじぃ…と海亀を睨んでいる。

彼女はそれから数分間も海亀が泳ぐのを待っていた。

そして、水槽の前で俺と目が合うと、彼女は慌てて「すみません」と言い、次の水槽に移った。

「…水族館、好きなんだ」

俺は、大きい水槽の前のベンチに座りながら、ぽつりと漏らす。

「そうですね…何か、不思議な感じがしません?」

「海の神秘みたいなカンジ?」

「あ、そうかもしれません」
< 98 / 121 >

この作品をシェア

pagetop