晴れのち雨ときどき曇り

星野は向かいの水槽をうっとりと眺めながら言う。

「…俺も、水族館は嫌いじゃない」

俺の天敵の日光も当たらないし。

「そうですか」

彼女はにこにこしながら、話を聞いている。

俺は、何か話題を見付けようとして魚の動きを追う。

よく見てみると、魚にも個性があるのに気付いた。

元気に動き回る魚。

岩に隠れている慎重な魚。

俺は、それが教室の様に見えた。

水槽と言う箱と、クラスという箱。

それらは、とても似ている。

ふと水槽の上を見ると、照明の近くでゆらゆらと泳ぐ小さな魚を見つけた。

淡く黄色い魚。

それは、くるくると旋回したり上に向かってするすると泳いだりしていた。

他の魚の周りを泳いでみたり、たまに辺りを見回したりするような仕草をする。

俺はつい面白くなってしまい、その弾みで言ってしまった。


「…星野みたいなのがいる」

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