恋の忘れ物 ~先生と私の追憶~


誰もいない静まり返った準備室に先生と二人きり。



そう言えばこういう場面あったな。

文化祭の準備の時でものすごくドキドキした。

雷が鳴って安心する為に抱きしめてくれた。

あの先生の体温忘れない・・・


今もドキドキするけどもっともっと先生といたい、触れたいって思うんだ。



けじめ付けるって言うのに欲張りになる私。






エアコンのフル稼働の音が準備室に響く。



「まだ、寒いな。」


そう言って先生は着ていたスーツの上着を私に掛けてくれた。


「せ、先生いいよっ。先生が風邪引いちゃうよ!」

「俺はいいのっ。ってか最後ぐらい先生らしい事させろよー。」


先生は笑ってお湯を沸かし始めた。




全然「先生」らしくないよ。

私にとったらこんな事するの、「男の人」しか見えないよ。

なんでこんなに私のキュンキュンするツボ知ってるの?

そんな事気づいてないんだろうね、先生は。



「何飲む?紅茶?」


「コーヒーが飲みたい。ブラックで。」


「は?ブラック?飲めんの?」


「うん。ブラックが飲みたいの!」



私コーヒーもまともに飲めないのに、しかもきっと最初で最後かもしれないブラックをあえて今飲みたいの。


先生と同じ空間、同じ時、同じモノを共有したい。




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