解体●閉鎖病棟
『幻聴が聞こえる』
その声が『幻聴』だと言うことは患者さんもわかっています。
「幻聴が聞こえるんです、『自分を殴れ』と言う声が聞こえて辛いんです」
患者さんはそう言います。
「その声に負けないでください、深呼吸してください」
わたしがそう言った時、
『負けちゃダメだ!』
『殴れ!』
このふたつの言葉が患者さんの頭の中を交差します。
そして、混乱する。
ダメだ、とわかっていて自分を殴ってしまう。
「今、プロ野球の話しないと、オレ、ダメかも」
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