月の夜 ~短編~
そっと、来た道を振り返る。


車道を挟んだ小道の向こう。
季節外れの綿毛のように、彼女はこちらへ歩いてきていた。

ちゃんと見れば怪談の類いなんかじゃぁないとわかる。

だけれど、真っ白なワンピースは見るからに寒そうで。
長い黒髪は、今にも風にたなびいたまま、カチリと凍ってしまいそうだ。

< 4 / 15 >

この作品をシェア

pagetop