赤い月
1章
導かれし者
「町外れの洋館のうわさ知ってる?」
学校の帰り道、友達の亜稀にそうきりだされた。
「へっ?洋館?」
この町に洋館があるなんて話は今まで聞いたことがなかった。
「え!月姫知らない?結構有名だよー?」
亜稀が少し驚いた様子で問い掛けてくる。
亜稀の話はこうだった―
町外れに古いが立派な洋館があり、今は誰も住んでいない空き家になっているらしい。しかし、最近夜中になるとその洋館から声が聞こえてくるのだそうだ。
「ねっ!だからさ今度見に行ってない?」
ホラー好きな亜稀は二重の大きな目をキラキラさせて私を見てくる。
こうなった亜稀はもうなにを言っても無駄なので来週の休みに行くという約束をとりつけて途中で別れた。
私はその時思いもしなかった。その話をした日に、まさかその洋館に足を踏み入れることになるなんて――