ポケットにカッターナイフ
代わりにシールを貼ってある筈のその場所には適当に剥がされた跡が残っていた。

慣れた事だ、と暁はもうずっと前からその跡を気にする事さえ止めている。

靴箱に入っていた上履きを引き出して履き、空いた場所に革靴を押し込んで蓋を閉め暁は鞄を抱え直す。
大きな声で挨拶を振り撒きながら教室の扉を開けた。

「おはようございまーっす!」

今日も一日何事も無く済めばいい。
それだけを願いながら歩くと、鞄を握る指先が緊張して少しだけ力が篭った。
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