夢みる蝶は遊飛する
緊張しながら私が席に着くと、鈴木先生は解答を一通り眺めたあと、満足そうに頷いていた。


よかった。


とりあえず及第点をもらえたらしい。

先生が解説をしている最中、隣の席から話しかけられた。


「高橋さんって数学得意なの?」


器用にペン回しをするその手を見ながら私は答えた。


「あんまり得意じゃないかな・・・」


だんだんと小さくなっていく自分の声に呆れた。

こんな状態では、この先うまくやっていけないかもしれない。


心を開いて話せる友達がほしいわけではない。

むしろ、誰も私の心の中には入ってこないでほしい。
同情も、慰めも、私には必要ないから。

けれど、ただ繰り返していく毎日を円満に過ごすためには、摩擦は無いに越したことはない。

今の私にとっての友達とは、その程度の認識でしかなかったのだ。

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