夢みる蝶は遊飛する
気配に気がついてからの数十秒の間に、ある程度予測していた事態なので、少しは冷静に対処できる。
まずは。
「どういうことか、説明してもらってもいいかな」
これ以上ないほど嬉しそうな顔をしている桜井くんに問う。
明確な答えが返ってこないのは分かっているけれど。
「や、だからそのままの意味! ありがとう、入ってくれて」
この人は大きな勘違いをしている。
いや、もしかしたら理解した上で都合良く解釈しているのかもしれない。
聡明な彼のことだから、きっと後者に違いない。
私には手に負えない桜井くんは、扱いに慣れている舞に任せることにした。
桜井隼人が駄目なら、この人しかいない。
びくびくしながら私を見ている須賀くんに向き直った。
たぶん、彼は悪くないのだと思う。
この乱入を止めようとさえしたのではないか。
私の知っている彼は、そういう人だ。