夢みる蝶は遊飛する
「い・・・いいの?」
舞によって作られたみみず腫れをさすりながら、、須賀くんが大きく目を見開いた。
「このままじゃ、桜井くんが可哀想だから」
頷いて、苦笑した。
視界の端に、再び舞に髪を引っ張られている桜井くんの苦痛にゆがんだ顔が映った。
「本当に? ありがとう!」
そう言って笑う彼の顔が窓から差し込む夕陽に照らされていて、とても綺麗だと思った。
光をうけて蜂蜜色に染まった髪も。
そのとき気がついた。
たぶん私は、この笑顔が見たかったのだと。
この笑顔を見るために、マネージャーの件を承諾したのだと。
できれば今の私の姿も、彼と同じ蜂蜜色であることを願って微笑んだ。
どこからか漂ってきた金木犀の香りが、ふわりと私たちを包んだ。