夢みる蝶は遊飛する

「一言で言うなら・・・マダム」

「ま・・・マダム?」


舞の言葉に首を傾げる。


「見ればわかるよ」


男子2人も、なんとも言い難い表情をしている。


私が想像の中では、つばの広い帽子をかぶっていたり、乗馬をしていたりというのがマダムだけれど。

サロンで金の唐草模様が描かれた美しい白いカップで紅茶を飲んでいるとか。

けれどそのイメージと、教師という職業があまりに合わない。


そう思ったのだけれど、3人はそれ以上教えてはくれなかった。



「失礼しまーす」


少し建てつけの悪い木の引き戸を開けた舞に先導されて、マダムと言われる顧問のもとへ。

机の場所から察するに、3年生の担当らしい。

手入れのいき届いた長い黒髪をもつその人物に、舞が声をかける。


「山田先生、マネージャーが入りました」


ゆっくりと振り向く顧問、山田先生の顔を見て、表情を崩さなかった自分を誉め称えたい。

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