夢みる蝶は遊飛する


艶やかなみどりの黒髪。

化粧が厚く白塗りで、明らかに首と顔の色が違う。

アイラインを黒で太くくっきりと上下に入れていて、ラメ入りであることまで確認できた。

睫毛にはマスカラが塗られているけれど、ビューラーを使いこなせていないようで、直角に折れている。

アイシャドウは鮮やかなピンクのグラデーション。

ピーチピンクのチークは、不自然なほど濃くしっかりと入れてある。

ヨーロッパ貴族のような大胆なフリルが胸元にあしらわれた光沢のある白いブラウスに、ピンクの大きな花柄のフレアースカート。

ストッキングは高級そうで、足首のところにアンクレットのようにラインストーンがついていた。


たしかに、マダムという表現は間違っていないかもしれない。

私は今までの人生で、これほど教職に向いていない外見をした教師を見たことがない。


「マネージャー? あら、初めまして。顧問の山田よ」


赤いペンにキャップをしながら、山田先生は微笑んだ。

目を細めると、目じりの皺がやたらと強調されることに気がついた。

私はなるべく先生の顔を見ずに名乗った。


「2年2組の高橋亜美です」

「えっとぉー・・・入部届、見つかんないからぁ、出さなくていいわぁ」


甘ったるく間延びした声を出しながら、雑然とした机の上をあさっている。

つい先ほどまで使用していたはずの赤ペンが、紙の雪崩に飲み込まれて消えていった。

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