夢みる蝶は遊飛する
そうこうしているうちに部活が始まった。
まずはランニング。
舞を先頭に、二列になって掛け声を出して。
部員たちが走っている間、私は真新しいノートを開いてシャープペンシルを握った。
誰の掛け声が大きいとか、手の振りが特徴的だとか、左足に比べて右足の上げが足りない、なんてことを書き込んでいく。
一見どうでもいいようなことでも、役に立つことがある。
些細な動きの特徴が、故障につながることもあるのだから。
昨日の自己紹介で、女バスの15人全員は名前を覚えることができていたので、比較的楽に書き出していくことができた。
ストレッチが終わり、次はランニングシュート。
もちろん、誰と誰が喋りながらストレッチをしていて、誰が丁寧に真剣に取り組んでいたかも、しっかり書き留めておく。
ランニングシュートの間も、パスの位置が悪い、足が逆、フォームが綺麗など、個人の特徴は尽きない。
自分がかつてプレイヤーだったので、見る目はそれなりにある。
「はい、左ー!」
舞の声が響き、素早く左からのランニングシュートの形態になる。
右利きの人の中には、左のランニングシュートを極端に苦手とする人もいる。
現に今も何人かは、先ほどまでそつなくこなしていたシュートをいきなり外すようになっている。